「人生100年時代の社会人基礎力」とオーダー絵画の関係とは

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「門間さんに描いていただいていた頃の自分が、絵を見ることで懐かしく思い出せます。今の自分から見ると、至らなかったり未熟だったりするけれど、それもまたいい」とよく言われます。脳科学的に言っても、言葉よりもイメージを覚えておくことの方が脳は得意です。特に、自分の深い感情と結びついたイメージは鮮明です。

イメージだと、体の内側からふつふつと感情が湧き出るように、思い出せるのです。「ああ、自分はこんなちっぽけだったのだな」「でも、頑張っていたな」と、愛おしく思えるのです。絵を通して振り返るので、一歩引いた目線で客観的に振り返ることもできます。

自分を振り返る力、内省は、今、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中で、あらゆるスキル習得の前提となる力として注目されています。

私自身、大学から「自分の感情や感覚を捉えて絵に表現する」‥‥ちょっと変わった描き方をしていたので、時々の絵を見返すと自分を思い起こせます。それは細々とした日常のワンシーンではなく、「その時どんな悩みや喜びがあったか」「次にどう変わっていったのか」という、根源的な自分です。

だから、描いた作品を、2000年、20001年、2002年‥‥などと、順番に並べてみたら、自分が何を追いかけてきたのか、まるで、真っ白な雪に足跡がポツポツと見えるように、はっきりと見えます。

例えば、2000年は、自分の根源をたどって、絵にする試行錯誤を始めたのがわかります。

人生や仕事の中で起こる、複雑な問題を解決しようとするときは、表面的なことや起こっている物事だけではダメだ、背景にある構造などを捉えるのが大切だ、と、【絵を通じて掴む】ことがだんだんできるようになっていきました。構造などは、言葉にするのが難しいものです。でも、色や形に置き換えると、理解しやすいし、イメージで掴むことができました。

さらに、イメージを絵に表すと、最初に言葉にできなかったものが、今度は言葉できました。

この頃は、二足のわらじを履いて絵を描いていましたが、もう一つの仕事も軌道に乗っていきました。心の奥深くを掴むと、行動も変化する。このことが、実感できてきて、ますます描くことが楽しくなっていったのです。

自分の描く動機、やりがいをしっかり掴む事で、その後にオーダー絵画を描く時にも、揺らぐことはありませんでした。だから、「思いつくままに話すことを門間さんにつなぎ合わせて整理してもらったら、いつの間にか忘れていた自分の原風景が浮かんできました」などと、クライアントの源をたどるオーダー絵画を描き続けています。

私たちは、自分の内面にある動機の源を把握できると、自分で自分を動かすことができるようになります。今までの無数の自分を、一人ひとり、丁寧に紐解けばいいのです。

自分を内省する、振り返ると、毎日の小さな行動の背後の、自分だけの構造‥‥価値観やビジョンが明確になります。自分の動機に基づいて、目の前の行動をしているのだ、と感じることができると、喜びが湧いてきます。たとえ辛いことでも、「これをやることに意味がある」と解釈することができます。

そして、これから自分が歩いて行くはずの、未来も自然に見えてきます。

こころの源を辿った作品「空中散歩(2009)」

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