家族|職場徒歩10分の家から2時間の距離に引っ越す、小さな子供と奥さんと愛犬を大好きなお父さんの場合

完成作品『家族』

「春から職場と家が遠くなりますが、家族との心の距離は今と同じようにありたいです。いや、遠くなるからこそ心は今よりも近くありたいです。だから、オーダー絵画で、家族を描いてほしいと思っています。家族は、私の拠り所、魂を支えてくれるものです。毎年、家族で写真館にいって記念写真を撮っています。毎年の子供の成長、家族の変化が写真に映し出されるのが本当に楽しみだからです。そうやって、『毎年を映しだすのとは違う何か』が絵にはあるのかな?と感じるので、このタイミングでお願いします」

確かにまず、記念写真と肖像画は、写真と絵との違いがあります。記念写真は、おしゃれでカッコよく写しつつ、その時の【記録】の役割が大きいです。肖像画は、絵ですから、【記録】であるとともに、描かれる人の想いを写します。

だから、時にまるで別人のように描かれる時があります。絵画史で有名なのは、ナポレオンでしょう。フランスの巨匠ダヴィッドが描いた『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』(1801)は、白馬にまたがる美青年として描かれていますが、実際は、小柄でずんぐりしていました。また、実際に乗っていたのは、ラバでした。この絵は、アルプスを実際に越えた時を元に、カッコいい指導者イメージが描かれています。

彼の名言として、【人間を動かす二つのてこは、恐怖と利益である。(Two levers to which man is moved are fear and the benefit.)】があります。民衆に『勝利という<利益>をもたらしてくれそうだ!』と思って動いてもらうための絵であったのでしょう。

このように、肖像画は人の想いを大胆に表すことができます。

「はい、記念写真とは違う役割をできますよ」と答えました。安心したHさんは、さらに話を進めました。

Hさんは、整骨院の院長です。東京の下町で、医院と自宅はすぐ行き来できる距離にありました。歩いても10分かからないくらいの近さです。だから、仕事が終わったらすぐ、家に帰ることができました。Hさんには、小さな子供たちが3人います。しっかり者の奥様と、子供たちのアイドルである犬がいますが、子供たちはお父さんも大好き。でも人を治す仕事ですから、いつでも子供たちに合わせて時間を作ることができません。急に痛めて来院する人もいます。場合によっては、それが夜になることもあるのです。だから、いつでも家から仕事場に行ける、仕事場からすぐに家に帰れるのは、良い環境です。

でも、Hさんは、【子供たちが思いっきり駆け回れる環境にしてあげたい、心身を育む家で暮らしてもらいたい】と強い想いがありました。今の場所は便利な一方、日々育っていく子供たちには狭くなりつつあり、豊かな自然とも離れていました。そこから『今だけじゃなく、未来もずっと幸せであってほしい』という気持ちが湧き始めます。忙しさの合間をぬって時間をかけてコツコツ場所を選びながら家族を説得しました。そして、無垢材を使った住宅を千葉につくり、そこから2時間かけて通うことに決めたのです。

「これから引っ越します。妻にも子供達にも大きな変化です。信念を持って決めたけれど、先は私にも家族にも想像つきません。だから、今、門間さんのオーダー絵画かなって。

『門間さんは、話を聞いて描くだけでなく、話をキャッチボールしてくれる』と言われました。それ聞いて、『引っ越してよかったのだ、と、あとでこのターニングポイントを振り返ることができる、記念になる絵を描いてくれる』‥‥と感じました」と、思いを伝えてくれました。

「確かに、言われた通りに描くのではなく、描く前、さらに描く間の対話に時間をかけます。『門間さんと対話していると、最初に思っていたよりしっくりくるものが浮かんでくる』とみなさんいうのですよ」にっこりと答えると、Hさんは笑顔になりました。そして、話している中で、「自然体の家族の空気から絵を考えてもらいたい」と思い浮かんで、Hさんの家で家族皆さんと会うことになりました。

幸せ、成長繁栄に、マインドフルネス的な心が大切です。例えば、世界にマインドフルネスを広めたハン師のいう、<人間性と安心と希望>が土台にあることです。これらは、【今ここ】にいる自分を心から認めることから始まります。今の自分を曇りない目で見ると、自分の立ち位置がはっきりするので、今を未来につなげられます。

マインドフルネス的な根がしっかり張って、愛に育まれた茎や葉が育って、美しい花、ありたい姿を咲かせるのです。

Hさんの家で、私が思い浮かんだイメージは、「全く思いつかなかったけど、描いてもらったら、我が家そのものだ!」と、言われました。そして、そこから出発して、家族みんなの想いが詰まった作品となって完成します。

続きは、また別の物語です。

完成作品『家族』

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