表裏を見る|隠れた日本世界ナンバーワンの指標とジャポニズムが教えてくれること

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メディテーション絵画「表裏を見る」

沈む日本、沈む円、など言われることが多いですが、2000年以降、日本が世界1位であり続けている経済指標があります。

「経済複雑性指標」(ECI)。

マサチューセッツ工科大学、セザー・ヒダルゴ准教授(当時)が提唱した「技術の擦り合わせによって複雑なモノを生み出す能力」の高さを示すもの。
ECIは1998年以降のデータが開示されており、98年は、スウェーデン、ドイツ、スイスに次いで日本は4位、99年は3位。そして2000年以降、日本は1位をキープし続けています。

過去に複雑な高度な技術で、世界を席巻した美術の例としては、「ジャポニスム」があります。
ジャポニズムとは、西欧美術における日本美術の影響。19世紀半ば以降、着物や絵本などの日常から印象派の絵画やアールヌーボーの工芸などの美術品まで幅広いブームがわき起こりました。当時の精密な超絶技巧の工芸品などは、「技術の擦り合わせによって複雑なモノを生み出す能力」が、日本人のDNAであることを感じさせます。

1867年にフランスで開かれた万国博覧会で、日本の展示は流行の先端として高く評価され、ジャポニズムとしてヨーロッパ、アメリカへと広がっていきました。「全てのアジア諸国の中で最も完成されており、最も輝きを放っている展示は、異論の余地もなく日本のものである」と称えられました。
当時、ヨーロッパから見てアジアの中に埋没していた日本は、「伝統の保持」や「創意工夫」といった独自の芸術的価値が認められることで、はっきりとしたかたちで認識されていったのです。

これには、裏話があり、現代で「経済複雑性指標」(ECI)第一位、と言われる私たちは、裏から眺めたジャポニズムにも深く学ぶ必要があります。

裏、とは、万国博覧会を開いたフランスから見た日本です。

フランスは、フランスのために博覧会を開いたのです。フランスのためになるから日本を褒め称えたのです。

フランスは、「産業芸術」を改善することを目指し、それによる経済発展に期待を寄せていました。イギリスと競り合いながら、フランスの輸出増加を目指して、ヨーロッパにはない<改善モデル>を探していたのです。そして、フランス政府が見つけたのが日本の産業芸術でした。

フランス政府は、自国のために戦略的にパリ万国博において日本の工芸品を絶賛したのです。そして、フランス国内に「ジャポニスム」として広めることで、フランスは自国の隅々まで<改善モデル>を教育、展開していきました。それは、「日本の単純な模倣をせず、我々の用法に適用させ、発展させ、改良させて、我がものにすること」という注意喚起を伴った、用意周到なものでした。

その結果、印象派やアールヌーボーといった、新しい「産業芸術」が生まれていったのです。
私たちは、ジャポニズムの歴史から西欧の人々の持つ、好奇心と創意工夫、素晴らしい創造性をも学ぶことができます。

2000年以降、日本が世界1位であり続けている経済指標がある、「経済複雑性指標」(ECI)は、日本がダントツなのだ、すごいのだ、と、単純に喜んではいられません。

最近では、「シン・日本の経営 悲観バイアスを排す」ウリケ・シェーデ著が、ベストセラーとなっていると聞きます。
西欧の学者が、日本人が日本は沈んでいると悲観している間にも日本の素晴らしいところを科学的に取り出して、彼らの血肉として学ぼうとしています。

現代の日本人こそ、日本人が脈々と受け継いできた創意工夫の精神で、今までの日本や世界の叡智を「単純な模倣をせず、今の日本人の用法に適用させ、発展させ、改良させて、我がものにすること」が求められていると感じます。

19世紀、ヨーロッパ第一の芸術国として誇り高いフランスの美術批評家エルネスト・シェノーは、「日本人が、動物や植物といった自然を取り上げ、精彩に富む表現を習得し、これが日本の産業芸術に想像力にあふれたスタイルを与えている」と言いました。

自然、には<人>も入ります。
世界中の多様な人々の文化知識を取り入れ、それを習得し、独自のスタイルを作り上げることは、私たち一人ひとりに託された、日本の未来でもあります。

絵と言葉によって、クライアントと一緒にオーダーメイド絵画を作り上げていく特殊な仕事を通じて、私はいつも、誰もが持つ素晴らしいクリエイティビティに感動します。

表裏をしっかりと受け止め、自分の頭をフル回転させ、受け継いだ創意工夫の精神で、一人ひとりが新たな未来を作り上げることができると私は信じています。

そんな想いをメディテーション絵画に込めました。


メディテーション絵画「表裏を見る」

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