「氵(さんずい)」の構想画|ヒルマ・アフ・クリントと、自分とつながる心の地図

「不思議な絵だな」PCのディスプレイで、偶然目に飛び込んだ。それは、今、美術史を塗り替えるとまで言われている、ヒルマ・アフ・クリントの抽象絵画でした。去年のことです。

亡くなって80年以上経つのですが、代表作の「10の最大物」シリーズをはじめ、瑞々しい色彩と、快いリズムが、今の私たちに生き生きと語りかけてくるようです。

東京の近代美術館に展覧会が来ていて、先日行ってきました。

特に「10の最大物」シリーズは、その巨大さに圧倒されます。描かれた渦巻きや丸い形などが、宇宙のようでもあり、何か植物のようでもあり、体内のようにも感じさせます。

なんの予備知識もなく、楽しめる。そういう絵です。ただ「見る」だけではなく、「感じる」ことができる。

そして、絵に入り込んで、世界ってなんだろうとか、自分の内側に耳を傾けることができる。

アフ・クリントは、当時の先端科学や時代の潮流に詳しい知識人だったけれど、軸に「自分の中を探究して真理を見つけよう」という魂があり、それが、絵を通じて語りかけてくる。

抽象絵画の父と言われるカンディンスキーは、絵画をだんだんと抽象的にしていくような段階があります。しかし、アフ・クリントにはありません。

もっと、絵と自己探究が近い。

だから彼女の絵は80年経っても古びない‥‥という気がします。

そして、今は、様々な知識は無料でも得られる一方、自分の探究、自分が追い求める答えを見つける旅は、自分で歩くしかありません。だから、絵や様々な知識の前に、自分の在り方を振り返ることが大切だと思っています。

それらは、目に見えないものもあるので、私は絵を描くとき、視覚だけでなく触れる感覚や空間の奥行きを意識して作品と向き合っています。

一緒に創り上げるオーダー絵画は、クライアントの自己探究に寄り添うので、見えるもの、見えないものも含む「いのち」が描かれていきます。

オーダー絵画の魅力は、それが単なる装飾品ではなく、依頼者の人生に寄り添い、時に力を与える存在になり得ること。

ヒルマ・アフ・クリントの作品には、ルドフル・シュタイナーの影響があり、シュタイナーの人智学という思想が教育、芸術、農業、医療等にスピリチュアルな要素を含んでいるように、私のオーダー絵画も精神的な探求を促す役割を果たしています。

依頼者との深い対話から生まれる最終的な一枚の絵は、単なる飾りではなく、その人自身が自己とつながるための「地図」のような役割を果たすのです。

多くの依頼者が、完成した絵を日々の生活空間に飾ることで、その作品が「自分自身を思い出させてくれる」存在になると語ります。忙しい日常の中で、ふと絵に目をやることで、自分が大切にしたいものを思い出し、内側の声に耳を傾ける瞬間を持てるのです。

視覚から触覚へ、そして心へと辿っていく。

視覚的な動きが身体的な反応を生み出し、作品を「生きている」かのように感じさせる手法はアフ・クリントの大きな魅力です。私も制作の各段階で、このような身体的な動きを意識しながら、作品に奥行きを与える工夫をしています。様々なプロセスを経ることで、一枚の絵の中に時間の流れや物語性が織り込まれていくのです。

オーダー絵画のクライアントの中には、「絵を見ていると、まるで触れているような感覚になる」と表現する方もいます。これこそが触覚的視覚の力であり、絵画が単なる視覚的体験を超えて、深い感情的・身体的な体験をもたらす瞬間です。

ヒルマ・アフ・クリントが時代を超えて語りかけてくるように、私のオーダー絵画も依頼者の「いま」だけでなく、過去と未来をつなぎ、その人の「いのち」の全体性を表現する作品でありたいと願っています。

依頼者との対話から始まり、幾多のプロセスを経て一枚の絵として結実する創作活動は、まさに見えるものと見えないものの橋渡しをする旅です。

アフ・クリントの作品を通じて触覚的視覚の重要性を再認識するとともに、私自身のオーダー絵画制作の中でこの感覚をどのように発展させていけるのかを改めて考えるきっかけになりました。これからも、視覚を超えた深い感覚を探求し続け、一人ひとりの「いのち」を描く旅を続けていきたいと思います。

もし、あなたも自分だけの「いのちの地図」としてのオーダー絵画に興味をお持ちでしたら、あなたの中のまだ言葉になっていない大切なものを、一緒に探す旅に出かけましょう。

作品は、

「氵(さんずい)」の構想画の一枚。依頼者が自己の流動的な感情や意識と繋がるための「地図」となることを意図しています。

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