門間由佳の「対話できる絵画」は,研究から生まれた方法ではありません。
書の筆に由来する身体性,技法中心に学ぶ美術教育の中で抱いた違和感,そして美大在学中に制作を表現技法であると同時に,自己を観察し実験する営みとして捉える契機を経て,長年の絵画制作とジャーナリングの中で形成されてきた探索の延長にあります。
研究は,その実践を後から記述・分析し,さらに制作と対話の精度を高める循環の一部として位置づけられます。
門間由佳は,
対話できる絵画 byMommaYuka(以下、対話できる絵画 byM)の制作プロセスを
大学において認知的研究の対象として扱っています。

ただし,
ここで行っている研究は,
対話や制作手順,技法の再現性を示すためのものではありません。
対話できる絵画 byMの中心にあるのは
言語化や手順化が困難な人間の判断です。
何を対話するか。
何を止めるか。
何を話さないか。
どの色を置くか。
どこで止めるか。
何を描かないか。
それらはすべて,
その場で生まれる関係性と文脈の中で行われる
総合的な判断であり,
芸術の聖域です。
ここでいう「聖域」とは,言葉や分析だけでは回収しきれない,
制作における身体感覚・造形判断・美的経験の核を指しています。
本研究では,制作過程における身体感覚,造形判断,対話,意味形成の相互作用を,
一般化・プロセス・概念として扱える範囲で記述し,分析します。
門間が研究として扱っているのは,
判断そのものではなく,判断が作用した結果として,
依頼者側にどのような変化が生じているか,
という点です。
研究では,制作前後の対話データや記述をもとに,
共感や自己理解に関わる変化が,観察・分析されます。
認知的な研究の数値や結果は,
制作プロセスの機能を探求するためのものです。
その中で,
対話できる絵画 byMは,「誰にでも再現できる方法」としてではなく,
画家の30年にわたる制作と造形言語の探究を背景とした
再現できない判断を含む実践として扱われています。
一方で、そこには一定の制作プロセスがあり、そのプロセスが人に作用している可能性があります。
門間は、その作用を扱うための枠組みとして、対話できる絵画 byMの制作プロセスを認知的に研究しています。
再現できない判断は、門間個人の身体性と熟達に帰属しており、そこには芸術の聖域があります。
一方で、一定のプロセスは、概念として記述し、共有することができます。
この両方を分けて扱うことによって,対話できる絵画 byMは,
芸術としての固有性を守りながら,認知的研究の対象としても位置づけられています。
また今後は,制作における造形判断や美的経験そのものをより深く扱うため,
美学的な論文として展開する準備も進めています。
▷理念:AI時代の判断者のための〈造形的思考力〉
▷Profile:自ずと変わる力を絵画から
▷作品/活動:「気づいたら変わっていた」の設計
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