『航:心のmemory|学生時代の友達とは全く違うオーダー絵画になったOさんの場合

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完成作品:『航:心のmemory』

「あらゆる絵の敵は、灰色である」ある画家が言いました。

それは、ルーブル美術館にある『民衆を導く自由の女神』を描いたドラクロアです。

灰色が敵?!水墨画が身近な日本人にとっては、ちょっと違和感がある言葉です。

日本を含む、東洋では
「墨(黒)は五彩を兼ねるが如し」と唐の絵画史家の張彦遠(ちょうげんえん)が言ったように墨の美学が発達しました。
黒い色を表す玄(げん)は、紀元前7世紀から「奥深い」という意味があり、本質を象徴する色でした。

では、なぜドラクロアにとって灰色は絵の敵だったのか?そこには、彼の個人的な体験があります。モロッコ旅行にて、アフリカの太陽に照らされた、多彩な色に魅せられたのです。輝く豊かな色彩はなんて素晴らしいのだろう!感動した彼は、自分の絵に表現しようと研究を重ねます。色彩を追い求めるから、灰色は<敵>になったのです。

ドラクロアの生きた19世紀は、インターネットなどなかったので、今のように世界中が瞬時につながりませんでした。しかし、今は世界を瞬時に見られる時代です。

ドラクロアの絵も、水墨画も、美しい。今は、多様な美を楽しめるようになりました。

多様な美の中でも、私が依頼されて描く絵は、【絵画を超えている】のが特徴と言われます。どう超えているのか?は、見る人によって様々な解釈がありますが、「門間さんに描いてもらう絵は、心のmemoryになるからいい」と依頼したのがOさんでした。

Oさんは、学生時代の友人Iさんがオーダー絵画を頼んだのがきっかけで、私の主宰イベントに足を運ぶようになりました。初めて来たとき「個展にうかがえて良かったです。感想をなかなかうまく言葉にできないのがもどかしいですが、結構な衝撃を(もちろん良い意味で)受けました」そして、時折フラリと来るようになりました。

時々の絵の感想から、Oさんはやさしくてきれいな色、かつ、芯の強さのある作品に惹かれるのだなと感じました。

Oさんが惹かれたあるオーダー絵画の下絵

一方、Oさんの友人であるIさんは、はっきりした色合いを好みます。
オレンジが映えるように、青系の色が部分的にはいる作品が、Iさんのオーダー絵画でした。

Iさんのオーダー絵画の完成作品:新しい調和へ

社会人になっても友情を育み続けている2人ですが、色の美学は全く違う。性格も違う。補い合うような関係性なのかもしれないと思いました。Oさんに伝えると「確かに彼と僕が同じ美学とは考えられないよね」ニコニコと笑いました。

その後、「絵が創られていく過程を知ることができて、門間さんに描いてもらうのは想いのつまった絵なのだと再認識ました。やっぱイイなーと思っています。今の僕が何をどう想っていたかを振り返れるような‥‥、10年経ったときに、『今までの自分はこれを大事に歩いてきたんだなぁ』足跡を懐かしめるような、心のmemoryになる絵を描いてほしい」と依頼しました。

Oさんは、いろんな絵を見るたびに優しいピンク色に心惹かれていました。色は、人の想いを反映することが多いので、包み込むような優しい想いがあるのではないか?とさりげなく話を聞いていくと「仕事以外で【子供を救いたい】想いがあるのだ」と打ち明けてくれました。優しいピンクは、愛を象徴する色と色彩心理で言われています。

Oさんの個人的で純粋な想いを聴いて、ああ、これは絵のベースになる色だと感じました。

さらに、セッションでじっくり聴き、構想の絵を描いてセッションを重ねていく中で、

希望や光を表す黄色、
海洋研究者としての知識と心を表す緑、
波の研究に没頭する時の象徴として青

が加わることになっていきました。

完成した絵を見たOさんは、「ワクワクが止まらなくて、テンションが上がりっぱなしです!門間さんのイベントで、人のために描かれた絵を何度も見てきたけど、自分の絵はこんなに嬉しいのですね」何度も絵を見てはニコニコしていました。

完成作品:『航:心のmemory』

その後、「会社のデスク周りに飾りました。絵を見てはニンマリしています」

OさんとIさんでは、求めた作品の色が全く違いました。たとえ、人生の一時期を一緒に過ごし、友情を育む友人でも「美しい!」と心の奥底まで揺さぶられるものは、人によって違うのです。

一人ひとりの授かった命に、毎日の時間が積み重なって、唯一無二になっていくのだから、違って当たり前。

多様さが混在する今だから、多様な色の美学があって当たり前。

だから、それぞれのテーマに応じて違った色彩処理で絵を描き出します。

Iさんのオーダー絵画の完成作品:新しい調和へ
Oさんのオーダー絵画完成作品:『航:心のmemory』

私が一番好きな色合いは青が基調のものですが、さらに、「好きな色調を増やそう!」としてきました。ドラクロアが豊かな色彩に感動したように、画家は、感動して心が動いたものを表現するのが大切だからです。

筆にのった感動は、単なる色としてではなく、感動自体も伝えます。人の心を動かします。単なる絵でなく【作品】になる。オーダー絵画を描くにあたり、それそれの想いを聴いて、その人の心をのせるのです。

同時に、感動だけでなく、ドラクロアが色を研究し続けたような論理力も使います。色は、【色彩構成】という言葉があるように、構成することで言葉では伝えられないメッセージも伝えることができるからです。

感性と知性が複雑に絡み合う【作品】創りを、それぞれのクライアントに耳を傾けて寄り添ってスケッチから起こし、数ヶ月かけて生み出していく‥‥。それは、異なるチャレンジの連続ですが、クライアントの「自分の言葉にできない様々な想いも表現されている」という笑顔は、かけがえのない宝です。

完成作品:『航:心のmemory』

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