『ソウル・ローズ』|イメージの力を高めるために大切な言葉のチカラ 

 

題名:ソウル・ローズ アンドステディ:靴のオーダーサロンに初めて飾ったときの様子

私はイメージの力を、使う時。<言葉のチカラ>も使います。

イメージを引き出すのに言葉?
画家なのに言葉?

矛盾しています。
でも、イメージには言葉が必要なのです。体感に結びついた、生きた言葉です。頭の中の映像を伝えるような感じ。

たとえば、
「真っ青で雲一つない空に真っ白な富士山がぽっかり浮かんでいて、山頂をヘリコプターでブンブンと旋回している。光に反射したキラキラした雪が半透明に輝いている。その時、風が巻き起こって、小麦粉のような細かな粉雪が一つかみ、さーっとヘリコプターに飛んできた。あっと思ったら、窓に点々と水滴がついて、きらめいている。きれいだ‥‥」

こんなふうにイメージします。

イメージ力は、今、

クリエイティブな力を引き出す
商談やパフォーマンスでの成功につながる
人間関係の改善ができる

など‥‥、注目されています。

こんなふうになりたい!というときは、体感に結びつけるのがコツ。ポジティブな体感を生き生き思い浮かべるのです。
特に大事なのは、個人的なこと。力があるイメージは、自分と結びついたものです。

オーダー靴サロンを運営するOさんの絵をイメージした時も、そうでした。
「サロンに、大人の素敵な女性にたくさん来て欲しい。でも、どんな絵なら大人の女性にふさわしいのかわからないのです」

サロンを開くまで、ベンチャー企業で何年も修行してきたOさんです。どんなものが人に受け入れられるのかを調べて判断する仕事もしていました。サロンを開いてからも、順調に業績を伸ばしてきました。わからないはずありません。

もちろん、話しながら私のイメージもフル回転。無数の映像が浮かんでは消えていました。でも、私が「これ!」と決めませんでした。
「女性の顔があったらいいのかな。ドレスとかがいいのかな」迷いながらも考えるOさんから気持ちが伝わってきたからです。

想いを一つひとつ聴いて行くうちに、世の中にあふれるイメージの中で迷っているのがわかりました。どれも大人の女性のイメージにつながります。でも、ワクワクしているようには見えません。

ときめかないなら、絵にしない。これが私の信条です。こんなふうになりたい!生き生きポジティブなイメージが必要なのです。

話をゆっくりと聴いた後、質問を投げかけました。

「<Oさんにとって>はなんですか?」
「個人的でいいのですか?」
「いいのです」
と促すと
「子供の頃、母が真っ赤な口紅を鏡の前でつけているのを見て憧れました」
生き生きとした体験が、言葉になりました。

鏡をのぞいて口紅を塗る母。美しく彩られる口元。後ろからドキドキと眺める気落ち。
生き生きと伝わってきました。

「赤色が絵の主役にふさわしいと思いますよ。赤い服を着た女性が主役でも、口紅を絵にしてもオシャレですね」笑顔で答えると、扉が開いたようにイメージが溢れてきました。
「バラを主役にしたいです。緑の葉っぱもあると素敵‥‥。深い青色もあるといいな」

今まで迷っていたのが嘘のように、オーダー絵画のテーマが決まった瞬間でした。

セッションをもとに立ち上がった構造画

Oさんの大人の女性のイメージは、子供時代にありました。でも、言葉にするまで、絵のテーマとしてまったく浮かんでいませんでした。

洪水のようにさまざまなイメージがあふれる時代、外に注意がむきがちです。大人の女性の美しいイメージも選び放題です。でも、ほんとうに自分に力を与えてくれるイメージは、外にはありません。内にあります。体感の言葉と結びついています。

内にあるといっても、たくさんある。
一体どれなのだろう?というときは、もっと探ってみる。

本当に自分に力を与えるものは、思い浮かべて言葉にしたとたん、他の全部を押しのけるくらいパワフルです。これこそ、生きたイメージです。

北京五輪フィギュアスケート男子で4位入賞した羽生結弦は9歳の自分が拠り所になったといいます。「技術的には今が間違いなく一番強いです。ただ、精神的にはあの頃が一番強くて輝いている」多くの指導者やアスリートたちの言葉や理論。全てを踏まえて、そして、最後の最後に、体感をチカラに自分らしい決断をしました。

自分と結びついたイメージは、人生の拠り所になるくらい、強い。
時間をかけて探す価値があります。

そして、探し出したイメージを、活かすのも絵に表現するのにも、言葉のチカラが大切になってきます。

実際、最初に立ち上がった構想画と、完成した『ソウル・ローズ』の画像を比べると、全く違う絵のように見えるのがわかると思います。イメージと言葉の行き来が、世界で一枚だけの作品をも生み出してくれるのです。


これはまた、別の機会に書きたいと思います。

この作品の別記事
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