『愛情王国』の額装|かわいい絵をますます可愛くするためのコーディネート

額装にはチカラがあります。例えば、日本で人気の印象派に、額装が大きな役割を果たしました。「睡蓮」のモネや「ピアノを弾く少女」のルノアールなどの画家たちが親しまれるきっかけを与えたのです。

額装、を辞書で引くと、【書画を額に納めたもの】(デジタル大辞林)とあります。シンプルな言葉から、四角い枠に絵や写真を入れて、保護ができればいい、という意識が一般的なのかもしれません。

しかし実は、額装に意味をもったメッセージを持たせることができます。

19世紀末期、まだ、写真のように絵を描くことが主流だった時代。ニューヨークの画商たちは、写真とはかけ離れた印象派の絵画をある額装に入れて、親しみやすいようにしました。それは、18世紀様式の額縁に入れるという方法です。18世紀様式の額縁は、豪華で金メッキなどのきらびやかなものでした。19世紀には、今のようにシンプルな額装が作られていたのですが、あえて1世紀前の額装様式を選んだのです。

「写真のような絵でなくて、奇抜すぎるかな?」と心配な人たちにとって、伝統的な額装に入れることで「絵は尖りすぎているかもしれないけれど、伝統的な額装に入っているから、なんか落ち着く」という効果をもたらしました。また、伝統的な額装であることで、印象派が伝統の流れをくむ芸術運動なのだというイメージも込めることができました。

オーダー絵画は、クライアントの想いが込められているので、額装をコーディネートするときは、作品の保護はもちろん、メッセージを持たせることを大切にしています。

『愛情王国』という作品は、画面のそこここに、小さな鳥が飛び立ち、花々が咲く中に、ピンクと青の天馬や、ペアの犬・猫・魚、龍がいる絵です。

「何かいるという気配とかも含めて、小さい可愛いものが安心して、愛情たっぷりにたくさんいてほしい」というBさんの想いを絵にするために、ものを描き出す前から工夫をしました。例えば、画面に気配を感じるような小さな揺れ動きを出すために、最初にスポンジを使って細かな凸凹をつけました。その上に絵の具を薄めたり混ぜたりしていろんな色を重ねていく。さらに、画面を削ることもする。重ねと削りを交互にすると、織物のように色が重なり輝いてきます。無数の可愛いものたちが描かれる土台が出来上がるのです。

この状態の時に主宰イベントで展示したら「見ていて不思議と涙が出てきました」という人がいました。可愛いものたちが無心に遊ぶための愛に溢れた空気感を感じたようです。

可愛くて温かい空気感の中に、極細の面相筆などを使って、小さくて無数の可愛いものたちを描いて完成しました。

完成した絵をしみじみとみたBさんは、「門間さんから画像を送られて可愛いく完成したな!と実物を楽しみにしていました。そして、実際に見たら、予想以上で・・・・」と目を輝かせました。そして「額装のオーダーもしていて、想いをのせてコーディネートしてくれるのですよね?絵に愛情を注いでくれたように、額装にも想いをいれてください。可愛くて素敵な額装をお願いします」満面の笑みを浮かべました。

美しい掘りの白い額を選びました。赤、青や黄色が微妙に入って、織物のような絵の繊細な色みを引き立てます。

絵の周りを飾る白系マットは、何かが生まれてくるような空気感を引き立てる凸凹した質感のものを選びました。

そして、絵とマットの間を繋ぐ金のフチも、細かな凸凹があるものを組み合わせました。

安全で安心な、愛情たっぷりな世界に、品や上質な空気が漂う、額装コーディネートが完成しました。

それを見て、「可愛くて、のびのび遊べる小宇宙。みんな仲良く、温かい世界が、ますます可愛く、素敵になりました!!」Bさんは目を輝かせました。

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