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/ カテゴリー: 書斎に飾る絵, 龍の絵

今の時代、仕事で必要とされる能力の一つに、情報収集力が上げられます。必要な情報を選び出すのは、日常業務はもちろん、就職、昇進、または転職‥‥。仕事のさまざまな節目に欠かせないと言われています。

実は、最も大切な情報収集の一つは、自分に対しての情報収集です。

自分の特徴にあった情報。自分にとって価値のある情報とは何か?一つひとつ考えながら、情報を集め、取捨選択していく。そうすることで、自分なりの見識や世界観を、築くことができるようになります。単なる情報分析は、これからAIが人間よりも遥かに適切に速く処理するようになるでしょう。

しかし、その人固有の見識、世界観は、まだまだ、科学的な数字に置き換えることが困難であり、今の時代、価値が再注目されてきています。近年、『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術 』(水野学、山口周著)が仕事術の本としてたくさんのビジネスパースンに支持されました。

こちらの記事にて、『自分の特徴を知るには、【自分の客観視】が必要で、「自分と他の人は、ここが違うのだ」という自覚が、大切だというお話をしました。

情報収集でも、客観視、はとても大切です。情報数収集能力とは、必要な情報に素早くアクセスし、良質な情報を得る力です。

情報収集が習慣化していて、常に疑問を持ちながら答えを求め、情報源を複数持って活用し、取捨選択に至るには、《自分の見識、世界観を常に感じながら、さまざまなものに触れて更新していくことを求め、自分の軸に従って取捨選択している自分自身を客観視する》ことが極めて重要です。

【対話できる絵画】という特殊なオーダー絵画は、その人の特徴を絵に表現していくので、自然に自分自身の客観視につながる、と、よく言われます。
自分では言葉にできなかった毎日眺めたい色やテーマが、オーダー絵画のためのセッションの中で、門間と一緒にイメージを一歩一歩選び出す中で、自然に絵というカタチになって客観的に現れてきます。その間に、色々な自分の特徴に気がついていくというのです。

オーダー絵画のためのセッションで、自由にのびのびと話していただくため全ての内容絵が必要だとは限りません。しかし、心のうちから発せられるものは、身振りや目の輝きなども含めて、一定の方向性をさし示していて、貴重なヒントになります。

以前の記事でお話ししたように、Sさんだけの8角形の絵の特徴は、創造性や自由への強い憧れがありました。

父の引いた人生のレールから飛び出して、自分で働いて留学をした体験、その時の南国の海や空の美しさ、研究の楽しさなどが、溢れ出てきたのです。

そして、丸い形を手で作って「こんな感じの青龍がほしい。」という言葉が飛び出しました。Sさんの頭の中に円を描く龍が浮かんでいるのが伝わりました。しかし、どんな青色かは言葉にも身振りにもなりませんでした。

こういう時は、聞き出そうとはしません。絵のイメージの色がはっきり浮かぶときは、聞かなくても、言葉や身振りで熱意を込めて伝えようとするものです。

セッションの後に、アトリエに戻り、静かにSさんの話を振り返りながら、青龍の色をさまざまに思い浮かべました。
溢れ出る言葉の中で、青色を強く感じさせたのは、南国の海と空でした。ほしい色は、熱意を込めて語るイメージに潜んでいます。南国の海、澄んだマリンブルーに手がかりがあるに違いない、と感じました。しかし、マリンブルーといっても幅広い色のグラデーションがあります。そこで、色の違いがはっきりわかる3枚の絵に分解して描くことにしました。Sさんが、「この色に近い」と指させるようにしたのです。

そして、次のセッションで、3枚の絵を並べると、Sさんは一瞬で「この青色」と深い青色からふんわりと色が移り変わるグラデーションを指さしました。「こういう深みのある、でも、澄んだ色のグラデーションの青い龍がいい。そして、希望を感じる黄色がうっすらと入っていてほしい」

Sさんが、自分だけの青いグラデーションの龍を選び出した、第一歩でした。

ふんわりと広がる青いグラデーションから、ハキハキと竹を割ったように早口で話す一見豪快なSさんのうちに秘めた繊細な感性が伝わってきました。

ここに、画像にあるように7つの星を抱く青龍が現れてくるのですが、
それはまた別の物語です。

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