壁とのバランス、絵との調和など空間全体から額装する絵

/ カテゴリー: 額装コーディネート

「門間さん、決まりました。白い壁に白い額がいい。白の額装にコーディネートをお願いします」

S先生は、キッパリと言いました。顔が晴れ晴れとしています。S先生は、歯科医院の院長で、飾ろうとしているのは、医院の待合室のために描いた絵でした。実は、決めるまでは、紆余曲折がありました。S先生は迷いに迷いました。でも、額装コーディネートでは、「幸せな悩みですから、楽しんで悩んでくださいね」と伝えます。

最初、S先生の頭の中には、医院で使っている濃い焦茶色から白まで、4段階の色が思い浮かんでいました。空間にある色味を使うのは、額装コーディネートの基礎です。どの色を使っても、額装と場のつながりを感じるので、よく馴染みます。待合室に適した選び方です。だから、4つの色味の額装のサンプルを選びました。そして、その時に、画家の気遣いでひと工夫をしました。

S先生の絵は、1メートル近い大きな絵です。普通は、数センチの額装サンプルを絵に当てて写真をとって比較するのですが、サンプルだけではイメージするのが難しいだろうと感じました。そこで、P Cで待合室の写真と完成した絵を合成して4通りの額装カラーを当てはめてみました。

最初、「どの額装も素晴らしいので選ぶのが難しい、と悩んだS先生でしたが、その画像を見て、「患者様に一番心地いいのは白だと思いました。白い壁に、淡い色彩の絵。その額装は、白い額がいい。気が付かないくらいさりげない額装がいいとわかったのです。ありがとうございます」と、晴れ晴れとした笑顔が返ってきました。

次に、ぴったりと合う額を探しに、銀座イトウヤに行きました。額装の熟練職人が集まる日本で数少ない場所です。

もう12年以上のおつきあいになりますが、額装コーディネートの最初の頃は、不審な目で見られたものです。普通は数個の額サンプルを選ぶのに対し、私は妥協ない額を求めてサンプルを山のように選んでしまいます。

さらに、私の額装コーディネートの目的は、「クライアントの世界観を実現する」ためなので、メーカーの違う額装を組み合わせようとします。「それは普通しないのですが‥‥」と困惑されることもありました。

でも、仕上がると「初めての組み合わせですが、これはいいですね!」と、取り組みに興味を持ってくれるようになり、「普段と違うコーディネートが楽しみです!」と変わっていきました。

絵に合うだけでなく、その人の想いを額装にのせるために妥協を許さない。という背景が、度重なる額装によって、だんだんと理解されていったのです。

そして、この額装の時にも、以前目に止めて「これがいいのではないか」と決めていた額装サンプルを確認しつつ、見落としがないかと額装のサンプルを再確認しました。

そして、一つの額が、目に止まりました。「さすが目が早いですね、お知らせしようと思っていた、新しい白い額ですよ」と、スタッフが笑顔で教えてくれました。「なんともぴったりです!」というと、

阿吽の呼吸で、新たに見積もりを出してくれました。

すぐに、「額装を決めにいったら、もっと絵にぴったりな額が入っていました」と、画像を送ると、予想通り、「門間さんのいう通り、素晴らしく合いますね」と新しい額に決まりました。

m2

そして、絵をさりげない額装に入れて飾った歯科医院の待合室。

そして、その後の歯科医院の待合室は‥‥。「弱っている患者さんが見て、『あ〜』といって帰ったり、『なんかいいわ』といって帰る人もいます。自然でさりげない癒しだなと思います」と、いつも待合室で患者様の様子を見ているAさんが、教えてくれました。

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