『Mの像』|フォーカスすべき点がはっきりして気持ちが安定するようなセッションを提供できる理由

/ カテゴリー: 対話できる絵画のもとになる絵たち
2007年 Mの像

スマフォを見続けることで、脳がヘトヘトに疲れる。

疲れるだけでなく、自分を客観視できなくなる。安易な快楽に流されやすくなる。脳の前頭前野の機能低下で、生活のパフォーマンスが落ちたりする!医学で今、言われています。

受け取る情報の、前頭前野での処理は、

浅く考える
深く考える
ぼんやりと考える

3つの機能です。

スマホを見ている時は、「浅く考える機能」ばかりを使います。そして、ここだけ使うと、脳が疲れてしまうのです。

最近の研究では、「ぼんやりと考える」のが大変重要なのが分かってきました。この時に情報の整理や分析をしたり、本質的な思考を培ったりするのです。「深く考える」のも、分析や思索に大事。この2つを使わないでいると、客観視できなくなり、手近な快楽に流されやすくなります。

「画家の記事だよね?」と突っ込みたくなる書き出しですね、笑。ですが、縁あって日本生理学会の会員になっているちょっと変な画家です。

そして、脳科学の知見に触れるようになって、なぜオーダーで、「クライアントのフォーカスすべき点がはっきりして、気持ちが安定するようなセッションを提供できるのか?」の理由を伝えられるようになりました。

うまく描けるのが理由ではありません。

「上手に描けていますね!」
「上手に描けたらいいな」
とよく言われますが、うまく描くのはそんなに難しくありません。数ヶ月から一年くらい真剣に学べば、誰でも写実的な絵を描けるようになります。私は高校3年の時に写実的な絵を描けるようになっていました。それは特別なことではなく、美術大学の絵画科に入学する学生は同じように描く力を身につけます。

高校3年の時に描いた油絵

みた通りそっくりに描くコツのようなものがあります。それを身につければ、誰でも「上手!」といわれるレベルになれるのです。

しかし、上手に描くのと自分の作品を創るのとは違います。

作品を創るには、しっくりくるやり方を見つける必要があります。

線の太さ細さ
色の濃い薄い
どんなふうに絵に入れるのか

などなど‥‥、

感じて
考えて、
分析して、
決めて、
行動して、
フィードバックする。

前頭前野での、「深く考える」「ぼんやりと考える」の機能を使います。特定の師がいなかった私は、この2つをフル活用してきました。そのため、脳科学的にいうと、客観的な視点や、本質的な思考力が鍛えられたことになります。

例えば、2005年の<手>を題材にして人の本質を描き出そうとした【Mの像】。モノクロの習作群は、白から黒のグレートーンの中での様々な試みです。

2005年 Mの像 手のモチーフだけで人間を表現しようとした作品 作品習作群
2005年 Mの像 手のモチーフだけで人間を表現しようとした作品 作品習作群
2005年 Mの像 手のモチーフだけで人間を表現しようとした作品 作品習作群
2005年 Mの像 手のモチーフだけで人間を表現しようとした作品 作品習作群

何十枚もの試行錯誤の後に、鮮やかな色彩の【Mの像】が生まれてきました。

情報はすぐに手に入りますが、自分が本当にフォーカスすべきものは、すぐ手に入りません。

2007年 Mの像 個展メイン作品の一つ
2007年 個展インスタレーション展示より
2009年 旧牧郷小学校 収穫祭でのインスタレーション展示より

自分がフォーカスすべきものは、試行錯誤や、深く考えること、客観的なフィードバックなどからだんだんと見えてくるものです。今、「1分でできる」「誰でもわかる」「すぐ変われる」情報に溢れています。確かに1分でできることもあります。もしも、フォーカスしたいことが誰でもすぐにできることだったら、そういった情報を追いかけていればいいかもしれません。

一方、
自分だけの人生ってなんだろう。
自分にしかできない貢献は何か。
知りたい。そういう人は、スマフォを時々手放して、深く考えたりぼんやり考えたりするのをお勧めします。

3分でも5分でもよいので、ボーッとする。散歩など体を動かすのもいいです。自分の感覚や勘を働かせる時間を増やすのです。あえて手書きの手紙を書くのもお勧めです。キーボードを叩くのと、手で文字や絵を描くのとでは、脳に与える影響は全く違います。私は手書きのメモだと発想が湧きやすいのを感じます。

スマホを使う時も、目的をもって調べれば深く考えることにつながります。

セッションで
「迷っていい」
「言われた通りでなくていいのだ」
「試行錯誤は必要なのですね」
とクライアントがホッとすることがあります。

自分の人生、自分の性質にそった真実にたどり着く。それは、「迷う時間さえも楽しい」と思える道のりです。

人それぞれの道はみんな違います。
でも、自分の真実を見つけるためのプロセスは、分野をこえた共通点があります。

コーチやコンサルの方から、「コーチングやコンサルティングを学んだのですか?」と聞かれることがたまにあります。でも、私が学んできたのは美術や美学の歴史です。そこに、紀元前から変わらぬプロセスを見つけることができます。

プロセスについては、また別の機会にお話しできたらと思います。

関連記事